参議院議員 牧山ひろえ 本会議代表質問 2008.1.11
○議長(江田五月君) 牧山ひろえ君。
〔牧山ひろえ君登壇、拍手〕
○牧山ひろえ君 民主党・新緑風会・日本の牧山ひろえです。
私は、民主党・新緑風会・日本を代表し、政府提出のいわゆる新テロ特措法案については反対、民主党・新緑風会・日本提出のいわゆるテロ根絶法案については賛成の立場から討論をいたします。
民主党は、まず旧テロ特措法に基づいて自衛隊が行ってきた六年間の活動の総括が必要であると主張し、政府に対して、海上自衛隊が給油を行った日時と場所、そしてF76と呼ばれる燃料の調達先など、十分な情報公開を求めてきました。しかしながら、政府、防衛省の情報公開は不十分であり、加えて、活動実態をごまかし、真実を隠ぺいするなど、疑惑は払拭されるどころか深まるばかりです。
イラク作戦への転用疑惑についても、政府は、自衛艦が給油した米艦船がイラク作戦に参加することはないと説明していましたが、その後、不朽の自由作戦に従事していればほかの任務を行っていても問題ないと答弁を変更し、テロ特措法違反が行われていた疑惑を一層深めています。
また、政府案では、補給先を海上阻止活動に限定するため転用は生じないとしていますが、米国防総省が説明したように、米艦船が複数任務に就くこともある以上、活動の限定は不可能であり、今後も転用が続くとの懸念が残ったままです。さらに、日本の補給がなければパキスタンの艦船が動かなくなるとも説明しましたが、これも事実ではありません。
では、なぜ本日ここでこの議論がなされているのか、もう一度考えてください。
安倍総理の突然の辞任劇、福田総理の登場という身内の事情による国家の政治空白の影響で新テロ特措法案の審議は大幅に遅れ、ここ参議院では会期を延長した後の十二月五日から実質的な審議が始まったではありませんか。まだ一か月です。党内事情のもつれが円滑な国会の運営を妨げた典型的な例です。国会は国民からの貴重な税金で運営されているのです。貴重な税金を納めている国民の感覚を無視したとしか思えない、国会の空費であったとしか言いようがありません。
物価の優等生と言われる卵の値段は十個で幾らになるか御存じでしょうか。また、電車の初乗り運賃は幾らであるのか確認したことがありますか。国民感覚は正にこれです。今、卵、食用油、食パンなどの日常品が軒並み値上がりしています。この新テロ特措法案を是が非でも可決させようとしている政府には、こうした国民感覚の空気を読めていないとしか思えないのです。
ほかにも今政治がすべきことは幾らでもあります。年金、医療などの社会保障関係の問題は言うに及ばず、原油高による家計への圧迫や、今や労働者の三分の一を超えた非正規労働者の問題など、国民には待ったなしの問題が山積しているのです。
政府は、年頭所感で総理大臣が提案した生活者、消費者が主役となる社会を実現させたいと思うのならば、給油活動の再開を議論するより先に国民生活の改善を優先するべきではありませんか。
さて、今国会の最大の焦点はこの新テロ特措法案と言われています。新テロ特措法案は、あくまで給油、給水の後方支援活動に限定して、アフガニスタンの治安維持活動と切り離し、事後の国会承認事項を削除、一年の時限立法とされています。これは、さきの参議院選挙で国民から大きな支援を受けた私たち野党に配慮して、抵抗を和らげようとした結果だったのでしょうが、私たちは今、この新テロ特措法案を容認することはできません。
先ほど申し上げた給油量を誤って報告していた件では、文民統制の上で重大なミスが発覚しました。防衛省は調査をしているとのことですが、いまだに当事者の処分をしていないではありませんか。まさか、まだ犯人捜しをしているのですか。国民はあきれています。
防衛装備品の調達に関する口利き疑惑についても同様に、国民はまたかと失望しているはずです。恐らく民間企業であれば、不祥事の経緯を詳細に調査して、それを受けて不祥事の再発防止を講じ、そしてやっと次なる行動を取るはずです。なのに、今般の防衛省における一連の不祥事について、防衛省は誠意ある常識的な行動をしていません。
どうしても給油活動を再開したいのであれば、これらの疑惑を徹底的に解明し、そして再発が絶対に起きないことを確認してやるべきです。襟も正さず再出発など、国民感覚とはまるで乖離しているとしか言いようがありません。民間を指導する立場である役所がこの有様では本末転倒です。まずは隗より始めよです。自身を律しなければならないのです。
国民世論も給油活動の再開には反対と表明しつつあります。インド洋における給油活動に関して新聞各社は毎月世論調査を続けていますが、その統計を取ると興味深い結果を得ることができます。参議院選挙明けの八月は給油活動の議論に関しては反対とする意見が多かったのですが、九月から十一月の間は賛成とする声に逆転しました。国民がインド洋での給油活動についてまだ真意を測りかねていたのであろうと思います。この時点では、国民の意見はまだ固まらず賛否が拮抗していたのです。
しかし、十二月の世論調査で大きな変化が起きました。各種世論調査で給油活動の再開に反対とする意見が続々と報じられたのです。新聞五社の結果を平均化すると、給油活動の再開に賛成とする意見が四一ポイント、反対とする意見が四五ポイントとなったのです。いよいよ国民が給油活動の再開について明確にノーと示したことに違いありません。
政府はこれまで半年間も掛けて国民に説明をし続けて、結果として国民はノーと表明したのです。これでも政府は世論を無視するのでしょうか。国会での審議時間がそれなりになれば、もう議論はしなくてもよいのですか。重ねて申し上げますが、国民は新テロ特措法案が衆議院で強引に再可決されることに懸念を抱いているのです。
そもそも福田内閣は国民の信を問うていないのではありませんか。どうしてもこの新テロ特措法案を可決、成立させたいのであれば、政府・与党は国民に信を問うべきではありませんか。現在、衆議院の与党は郵政民営化に賛成と言って当選した方ばかりです。インド洋における給油活動に賛成として当選した方はいないはずです。
いずれにしても、今国民は給油活動の再開を望んでいないのです。テロ特措法では、二百二十億円を超える巨額の国費が国際貢献の名の下で油代に使われました。もし、この新テロ法が衆議院で再可決されてしまえば、またしても巨額の国費が油代に消えてしまうのです。
さて、テロ根絶法案では、国連活動への参加と同時に、テロを根本的になくすために、テロの原因を取り除く民生支援を全面的に展開すべきだと明文化しています。つまり、貧困を克服し生活を安定させることが最優先なのです。今、アフガニスタンは、国土の荒廃に加えて、深刻な水不足により干ばつが広がり農地が失われる状況にあります。かんがいやインフラの整備に重点を置いた民生支援をすることによりアフガニスタンの再建を目指すこのテロ根絶法案こそが、アフガニスタン国民への支援であるのです。銃剣をもって人を治めることはできません。民生支援の道のりが迂遠なようでも、テロとの本当の戦いには民生支援という地道な活動が必要なのです。
銃をスコップに、油よりも水を、これが国際貢献であることを申し上げて、政府提出のいわゆる新テロ特措法案については断固反対、民主党・新緑風会・日本提出のいわゆるテロ根絶法案について賛成の立場からの討論を終えます。
ありがとうございました。(拍手)
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