ODA特別委員会の質問内容です。

参議院議員 牧山ひろえ ODA・政府開発援助等に関する特別委員会 2008.3.28
ODA・政府開発援助等に関する特別委員会 参議院議員 牧山ひろえ
○委員長(溝手顕正君) ただいまから政府開発援助等に関する特別委員会を開会いたします。
(中略)

○牧山ひろえ君
よろしくお願いいたします。
 本日は、昨日の外交防衛委員会での質疑に続きまして、五月の二十八日から三十日まで横浜市で開催される第四回アフリカ開発会議、TICADWについて外務大臣に再度伺いたいと思います。高村大臣、本日もよろしくお願いいたします。
 さて、昨日も申し上げましたが、アフリカでは一年間に一千万人、より深刻な数字で言えば三秒に一人のペースで子供が亡くなっています。子供だけでも三秒に一人のペースです。まさにアフリカへの支援は同じ地球に生きる人間として待ったなしの重要課題であるのです。  昨日、私は大臣との意見交換をさせていただきましたが、やはり時間がなくお互いの主張がまとまり切らなかったとの印象がございます。昨日、私はODA総額が減る中で円借款を始めインフラ整備費だけが高い伸びを示していることを指摘させていただきましたが、大臣はインフラ整備費が駄目だとは一概に言えないと答弁されておりました。昨日お願いしたインフラ整備費の細目についてまだ御返答いただいておりませんので、少なくともインフラ整備費よりは人道的な支援を優先するべきだと考えます。
 やはり私は人の命こそが優先されるべきではないかと思うんですが、確かにアフリカの中でも言わば食べる物に困らない国がある一方で、一日一ドル以下の生活を余儀なくされている、食べ物がなくて困っている、生きるのに困っている人々を抱える国があることも事実でございます。
 このTICADWでは人間の安全保障など多くのテーマが掲げられていることと思いますが、やはり私は、この会議を契機に、まず生きるための支援を参加者全員が共有することに意義があるのではないかと考えております。
 OECDの統計では、アフリカの五十三か国中二十九か国が五%の経済成長をし、資源価格高騰や国際的な穀物需給の逼迫による好景気で二〇%近い成長を遂げた国もございます。また一方では、ジンバブエやギニアビサウなど、この八年間の平均でマイナス成長を記録してしまった国もございます。私は、人道的な食料支援が必要であろう国とそうでない国との峻別には更なる綿密な調査が必要であると思います。ですが、もっと視野を広げれば、やはりアフリカに暮らす人もこの日本で暮らす私たちも同じ地球に住む仲間なのですから、食べ物がなくて困っている、生きるのに困っている方々に人道的な支援を優先するべきであると私は考えております。
 このアフリカ開発会議の場でも、是非まず生きるための支援を議論のテーブルにのせてほしいんです。
 重ねて申し上げるならば、TICADWは全体会議と個別会議の二本柱で構成されていると外務省の担当者の方々から昨日伺いましたけれども、今回はせっかくほぼすべてのアフリカの代表者が集まると聞いておりますので、一番弱い立場にある国に焦点を当てるべきだということを日本が主催国として声を大にして訴え、参加者の共通認識として周知するよう努力していただきたいと思うんですが、高村大臣、私のこの考えに対して御意見を伺いたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(高村正彦君) まず、インフラのリストについては委員の秘書の方と外務省のあれで二週間程度猶予をいただいてリストを出すということになっていると承知をしておりますが、その猶予はよろしくお願いしたいと思います。
 我が国は開発途上国の援助需要や経済社会状況や二国間関係などを総合的に勘案しながらODAを実施してきております。アフリカにおいて特に貧しい国に支援を集中すべきという御指摘でありますが、サブサハラ・アフリカ四十八か国のうち、三十四か国はいわゆる低所得国ということになっておりまして、アフリカ全体として厳しい貧困問題にさらされていると、こういうふうに思います。
 そのような中で我が国としては、ガバナンスが良く必ずしも資源に依存せずに成長する経済的潜在性がある国や紛争直後の復興から開発の途上にあり平和の定着を図る上でも食料、医療支援などの人道的支援を特に必要としている国、我が国との中長期的な経済関係を強化する必要性が高い国など、それぞれの状況に応じたきめの細かい支援を行っていく考えであります。
 委員がおっしゃる、まず生きるための支援だというのはよく分かるんです。よく分かるんですが、一方で、アフリカの国の中でガバナンスを良くして、よくやって五%以上の成長をし、もう少し支援をすればこれからどんどん成長が増えて、十年後、二十年後には今度は支援をしてくれる側にも回るような、そういう国にも援助するということもまた必要なことであって、貧困に対する対策、生きるための援助は必要ですが、その貧困を削減するという方向もやっぱり必要なんで、それは成長とそういう生きるための援助というのを、これをどちらか一方、こっちが優先でこっちは余り必要ないということは言えないのではないかというのが私の立場でございます。

○牧山ひろえ君
それぞれの国のお立場や御要望もあると思いますけれども、毎日物すごいペースで人々が亡くなっているわけですから、是非この私の思いを多くの方に理解していただいて、いわゆるあしたにでも死にそうな方がもうたくさんいらっしゃる国、いわゆる弱い立場にある国の支援をバックアップして、今後も日本が海外から一目置かれる存在であり続けることをお願い申し上げたいと思います。
 また、昨日申し上げましたように、パレスチナで成功している母子手帳普及プロジェクトのような日本独特の人道支援方法も併せて御検討いただけましたら幸いです。私もそうなんですけれども、子育て中の母親にはやっぱり母子手帳というのはなくてはならないものですから、是非よろしくお願いいたします。
 続いて、先日提出いたしました質問主意書の件について、十分な回答が得られなかった部分についてお伺いしたいと思います。
 私は、アフリカ支援に関しての認識及びTICADWへの取組についての質問主意書を二月二十七日に提出させていただきました。その中で二〇〇五年四月のアジア・アフリカ首脳会議で当時の首相が国際公約した対アフリカODA倍増計画の成果を質問いたしました。
 この対アフリカODA倍増計画は、公約した三年間で支援額が二〇〇三年基準の八・四億ドルから二〇〇六年の二十五・九億ドルに達したものの、実際には約束した贈与額が同八・三億ドルから七・四億ドルへと減ってしまいました。達成見込みではあるものの、今述べましたように内容に問題があるのではないかと思います。債務救済を除くいわゆる純粋な贈与額は実際には増えていないんです。
 この点に関して主意書で政府の認識を質問しましたところ、現在集計中であるとの返答がありました。そのお答えがあってから一か月経過しましたけれども、また昨年末のデータなども出そろっているはずですから、ここで正式な報告をしていただければと思います。
 このアフリカ向けODA倍増計画は当初の計画どおり評価できるものなのか、また国際公約は実際に守られたのか、御答弁ください。また、まだ集計ができていないというのであれば中間的な報告でも構いませんから、数値を公表の上、御答弁いただきたいと思います。御専門の方でも結構です。よろしくお願いいたします。

○大臣政務官(小池正勝君) 御答弁申し上げます。
 二〇〇七年という年は本件公約の達成が求められる年でございます。ODA予算をめぐる状況は厳しい中で、我が国は本件公約の達成に向けて取り組んでまいりました。二〇〇七年につきましてはまだ現在精査中でございますが、公約はおおむね達成できたと考えております。
 御指摘の中身の点の御質問がございました。我が国としては、ODA予算をめぐる状況は厳しく全体として予算が削減されている中で、アフリカ向け案件を積極的に実施してまいりました。
 その中身でございますが、確かに我が国のアフリカ向け支援額には債務救済ということが含まれております。しかし、これはDACの統計でも贈与には無償資金協力、技術協力、国際機関への出資、拠出のほか債務救済が含まれているところでございまして、我々は公約はおおむね達成できたものと考えているところでございます。

○牧山ひろえ君
さて、実際にはODA予算は十一年で四割減っています。この減少は、骨太の方針二〇〇六のODAを今後五年間で二から四%ずつ毎年減らすという方針によるもので、厳しい財政状況の中、毎年マイナスシーリングされている結果なんです。
 しかしながら、今日は詳しくは述べませんが、複数の日本の国際公約が達成困難な状況にあり、海外からは整合性がないのではないかと日本のODAに対して疑念を抱かせる結果となりかねないと思います。海外で支援を倍増しますと言っておきながら、国内では財源がないとぼやいているのでしょうか。せっかく日本がリーダーシップを取って海外に向けて支援を拡大すると宣言したわけですから、やはりODA予算のマイナスシーリングは避けるべきだと考えております。まさにTICADWとG8が開催される四十年に一回の好機である今年こそ、ODAについては万全の財政規模を確保することも大変意義深いのではないかと考えます。
 高村大臣、今年も骨太の方針は六月ごろに閣議決定されることと思いますが、この際、骨太の方針を修正すべく外務省として一層の努力をすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(高村正彦君) 本年は第四回アフリカ開発会議、TICADWやG8北海道洞爺湖サミットが開催される重要な年になる、四十年に一度とおっしゃいましたが、まさにそういう年でございます。
 ODAを活用し、途上国の安定と発展のために協力していくことは、我が国自身にとっても有益であると、我が国の外交政策において重要な課題であります。我が国がふさわしい国際的責任を果たすために途上国の開発及び地球規模の課題に積極的に取り組んでいきたいと考えているわけであります。
 一般会計のODA予算は過去十一年で四割減という厳しい状況にあるというのは委員御指摘のとおりでございます。残念ながら、〇六年の我が国のODA実績は、米国、英国に次ぐ第三位となってしまいました。他国がODA実績を伸ばす中で、国際社会の諸課題を解決し、国際社会における発言力及び信頼を高めるためにODAの一層の活用は不可欠であると、これも委員と同じ認識でございます。
 骨太方針二〇〇六では、一般会計ODA予算について二〇一一年までの五年間はマイナス四ないしマイナス二%とされておりますが、一方で、同方針ではODA事業量について百億ドルの積み増しを目指すとの国際公約を着実に実施するということとされているわけであります。
 外務省としては、TICADWやG8北海道洞爺湖サミットでしっかりとした成果を上げて、ODAの重要性についての国内で一層の理解を得る契機としたいと考えております。国際社会における主導的な役割を果たすため、引き続きODA予算の確保に向けて取り組んでいきたいと、こう考えているところでございます。
 是非委員に応援をよろしくお願いをいたします。

○牧山ひろえ君
ありがとうございます。
 昨日の外交防衛委員会の場で木村副大臣から、四十四か国のアフリカ諸国の首脳がTICADWに参加するとの御答弁をいただきました。この四十四か国の首脳が日本で一堂に会する意義はとても深く、いろんな面で活発な意見が交換なされることを期待してやみません。ですが、アフリカ諸国でも隣国同士のトラブルや部族間のトラブルなどが依然としてあり、内戦や国際問題にまで発展するケースもございます。
 TICADWでは多くのアフリカ首脳が集うわけですから、日本が音頭を取って、トラブルや対立問題を抱える諸国の仲裁役になって、未来志向の話合いを通じた平和提案をしてみてはいかがでしょうか。まさにTICADWの目的でもある人間の安全保障にも結実する行動であると思います。高村大臣、隣国トラブルや対立問題を抱える国々の間に立って、是非とも人間の安全保障を実現していただきたいと思うんですが、御意見をお聞かせいただけたら幸いでございます。

○国務大臣(高村正彦君) 委員御指摘のとおり、平和の定着というのは持続可能な開発の前提として極めて重要でありまして、そのためにもアフリカ諸国が平和と安定に基づいた関係を構築し維持することが大切だと考えております。特に、我が国は平和協力国家としてアフリカ諸国のオーナーシップを尊重しつつ、アフリカにおける平和構築に積極的に貢献していくことが重要と認識しております。このような認識の下、TICADWにおいてもアフリカにおける平和の定着と民主化を重点事項の一つとして議論して、具体的な成果を国際社会に発信していきたいと考えております。
 まさに平和の定着というのは持続可能な成長のためにもあるいは人間の安全保障のためにも、ともかくすべての基礎の基礎でありますから、一生懸命取り組みたいと思います。

○牧山ひろえ君
では続いて、日本版ノーベル賞とも言える野口賞についてお伺いしたいと思うんですが、このことを、この野口賞について御存じない方はたくさんいらっしゃると思うんですが、今後どのようにこの野口賞について周知徹底を図っていくんでしょうか、また認知度が今あるとお考えでしょうか、参考人の方、よろしくお願いいたします。

○国務大臣(高村正彦君)
 済みません、参考人じゃなくて私から答えさせていただきます。
 野口英世アフリカ賞につきましては、第一回授賞式及び記念晩さん会がTICADWの初日である五月二十八日の夕刻に、TICADWに参加するアフリカ首脳や国際機関の長の参列の下、盛大に行われることとなっています。この機会を最大限に生かして、国際的に本賞の意義を発信していく考えであります。
 TICADそのものを余り知らない人がたくさんいるんですが、私は、多分野口英世賞の方がすぐ国民に知れ渡る、国際的にも知れ渡ると思っているんですが、むしろTICADというものを知らせるのが大変だと、今苦労しているところでございます。

○牧山ひろえ君
この野口賞に関してなんですが、残念ながら賞金となる民間からの寄附金が当初の目標に届かず結果として公金を投入する事態に陥るなど、制度面での問題も指摘したいところですが、広報面の課題もあるということを申し上げておきたいと思います。
 次に参りますが、先ほど藤末先生のお話にもありましたが、いわゆる平和構築の人材育成寺子屋構想のパイロット事業が昨年から始まり、先日、第一期生が輩出されたとのことですが、まさに日本にとっては朗報であると思います。
 これまで、海外での活動を志す若者は、自力で支援団体を探り当て理想とする活動に従事してきた経緯がございます。若いうちは勢いで活動できるんですが、いざ結婚や就職など現実の問題に直面すると、どうしても志半ばにして帰国しなければならない状況にあったそうです。これを俗に魔の三十代と言うそうです。
 この寺子屋構想の背景には、お金を出すが人は出さないと言われ続けた日本の支援方法が次なる段階に進みつつあるものだと高く評価したいと思います。
 ただ、残念なのは、この寺子屋構想に応募してきた多くの若者が門前払いに遭ったことです。日本人の定員はたった十五名と大変な狭き門なんです。聞くところによりますと、九十人を超える志願者があったそうですが、その多くの志を生かし切ることができなかったことは大変残念に思います。結論から言えば、予算が少ないからとなるのかもしれませんが、このプロジェクトを継続して、日本から海外に多くの有能な人材を派遣、輩出していくことは大変意義深いことであると思います。
 高村大臣、私は、こうした人材育成とまたその受皿をきちんと担保していくことがODA活動では求められている姿なんだと思います。この寺子屋構想はたった二年間のパイロット事業でありますが、その後継続されるべきであるとお考えでしょうか。人材育成の観点も含めて是非御答弁ください。

○国務大臣(高村正彦君) 二年間というのは、あくまでパイロット事業としての期間が二年間ということでございます。人材の育成という本件事業自体の性質上、これは中長期的視座に立って検討していくということが不可欠であると、こう思っております。
 パイロット段階を終えて事業が本格化される場合の在り方に関しましては、パイロット段階で得られた教訓やノウハウを組織的に集積するのみならず、関係省庁間の情報共有、連携協力の推進等、政府一体として効果的かつ効率的な対応が取れるよう引き続き検討を進めてまいりたいと思います。
 予算の関係がありますから、今私が一存で言うわけにいきませんが、まあもう少し拡充してもいいのかなと私個人としては思っているところでございます。

○牧山ひろえ君
続いて、広報体制について伺います。
 例えば外務省のホームページではTICADWとG8双方へのリンクが張られていますが、官邸のホームページにはG8のバナーしかございません。
 先ほどの話題にも出ましたけれども、いろいろな場所でTICADWの話題を出すんですけれども、いま一つ浸透していない、つまり国民に知られていないという印象を受けます。この広報体制について、政府では具体的にどのような取組をされていますか。御担当の方、是非お聞かせください。

○政府参考人(木寺昌人君) お答え申し上げます。
 TICADの広報につきましては、ロゴを作成するとか、それから横浜市の方でも大変御熱心に、一校一国運動とかですね、学校で一つの国を勉強する、成果を地下鉄の駅に発表するとか、そういうことを進めていただいております。
 それからさらに、外務省としては、アフリカに関係するサイドイベント、これはJBICでありますとかJICA、ジェトロ、そういったところがTICADとタイミングを合わせて様々なセミナー等を開催する、それから写真展でありますとかコンサートでありますとか、そういったものを通じてアフリカそれからTICADをよく知っていただくということをやっております。
 それから、女優の鶴田真由さん、この方に親善大使になっていただきまして、今アフリカの方にお出かけになってアフリカと接すると、そういう映像をさらに皆さんに共有していただいて、アフリカ、TICADを更に広く知っていただくと、そういう作業をどんどん進めているところでございます。

○牧山ひろえ君
引き続きお願いいたします。
 時間となりましたので、終わらせていただきます。