財政金融委員会の質疑録です。

参議院議員 牧山ひろえ 財政金融委員会 2009.3.17
財政金融委員会 参議院議員 牧山ひろえ
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○牧山ひろえ君

民主党の牧山ひろえです。よろしくお願いいたします。
 今日は、日本の寄附税制について財務大臣にお伺いしたいと思います。
 この御時世でなぜ寄附の話題と思う方もこの中にいらっしゃるかもしれませんが、この経済状況だからこそ社会で助けを求めている人々のためにNPOや公益法人の活動の活性化を図ることが必要だと思います。またさらには、これらの団体の活性化によって雇用の創出にもつながると思うんです。
 また、寄附をする人にとって寄附行為とは善意の表明と社会とのつながりを実感する意義深い行為だと思いますし、寄附を受け取る側はその善意を社会に還元していく原動力に変えて責任を持った行動をすることとなると思います。この一連の動きが寄附をする方の思いや夢を社会に実現させることにつながると思うんです。
 実は、先週の木曜日、私は与謝野大臣がある医師会の勉強会の場で発言された内容をよく覚えております。大臣は、社会保障で内需を拡大することは経済の発展につながるとおっしゃっておりました。やはりこの寄附の文化を日本にも広めていくことが、社会保障に大きな役割を果たすNPOですとか公益法人の活性化、やがては大臣がおっしゃるとおり経済の発展につながるのではないかと私は信じております。
 また、冒頭で申し上げておかなくてはいけないのは、私がこれからお話ししたいことは、お金持ちによる高額の寄附についてのお話ではなくて、いかにして一般の人々が寄附を気軽に、またある意味メリットにしていくことによって、寄附のみならず税金に深い関心を皆さんにも持っていただくかということです。
 日本の寄附文化を発展させるためには、まず諸外国の実態を把握するとともに、税制など制度面の更なる見直しが必要であるというスタンスの下、質問を始めさせていただきたいと思います。
 まず、税制の制度面から確定申告について伺います。
 昨日、ちょうど三月十六日は平成二十年度の所得税、贈与税の申告納税の期限日でした。多くの方々が申告を済まされたと思います。私も以前から確定申告という形を取って自分で税を納めていますので、自分の税金を把握するとともに、その税金で国を支えているという意識を持ち続けていました。しかし、一方では、多くのサラリーマンや公務員の方々は年末調整において納税をされております。ですから、余り納税者意識に敏感ではないと指摘されることもあります。
 それでは、大臣にここでお伺いしたいんですが、この確定申告と年末調整のメリットとデメリット、そして大臣としてはどちらの納税のスタイルが望ましいとお考えでしょうか、お聞かせいただければと思います。

○委員長(円より子君) 財務省加藤主税局長。

○牧山ひろえ君
 大臣にお願いします。

○委員長(円より子君) 先に加藤さんにしていただけますか。

○政府参考人(加藤治彦君) ちょっと事実関係だけ先に申し上げます。
 年末調整制度は、納税者の手続を簡便化して納税のための社会的な費用をできる限り小さくする観点から行われているものでございまして、これは、やはりこれを廃止するということについてはなかなか、すべての納税者に確定申告を義務付けるということになりますので、かなり大きな問題になるものと思っております。
 いずれにいたしましても、確定申告を行うということの意味はもちろん十分承知しておりまして、給与所得者でございましても医療費控除や寄附金控除等の適用を受けるためには確定申告が行われておりますので、給与所得者も確定申告を行う機会というものが用意されているということはこういう状況でございます。

○国務大臣(与謝野馨君) 私は、会社が税務署に代わって税金を控除したり、保険料を役所に代わって集めたり、あるいは年末調整をやったりというのは極めて行政効率の上では優れた制度であると思っております。そういう意味では、申告制度とそれから会社それぞれがやっている年末調整、両方とも私はいい制度ではないかと思っております。

○牧山ひろえ君
 では、納税者の立場を考えて、どちらの方が自ら納めている税の意識を高める効果があるとお考えでしょうか。

○国務大臣(与謝野馨君) それは、細長い紙っぺら一本毎月いただくよりは、自分で確定申告書を書いた方が自分と国のつながりは出てまいります。ただし、所得税を納税されていない方が一千七百万人もおられますので、そこで国と国民との間が断ち切れているという実は重大な問題があるということです。

○牧山ひろえ君

 私も大臣と同じ考えで、やはり自ら納めている税の意識を高める効果としては確定申告の方が望ましいと思います。
 数字を確認したいのですが、確定申告をする人は二千三百六十万人と聞きますけれども、確定申告と年末調整の比率はどれぐらいでしょうか。参考人の方で結構です。

○政府参考人(岡本佳郎君)
 お答えいたします。
 確定申告自体の申告者数は、御指摘のとおり二千三百六十二万人、十九年分でございますけれども。正確な年末調整の対象となる納税者数というのは、我々としては把握をいたしておりません。

○牧山ひろえ君
 後ほどその点についてはお伺いしたいと思います。
 より多くの人が確定申告をするようになれば、自分が納めている税の使われ方に関心を持ち、更なる民主主義の発展に寄与することにもなると思いますけれども、いかがでしょうか、大臣。

○国務大臣(与謝野馨君)
 私は税理士に教わって自分で確定申告を何度も書いたことはありますけれども、これをみんな個人個人にやらせるというのはなかなか手間なことであると私は思います。

○牧山ひろえ君

 釈迦に説法だと思いますけれども、非常に便利になりました。納税者にとっては、確定申告を大臣がおっしゃっていた理由で望まないという声も確かにあることはありますけれども、例えば医療費控除の足切り額十万円を見直すことや今日議論させていただきます寄附金の税制の見直しを行えば、納税者の税への関心が高まり、自分で納税作業をしたいという気持ちが皆さんの中で増えて、結果として広い意味での民主主義の発展に寄与するものだと私は考えております。
 私は、昨年六月、我が国の寄附税制に関する質問主意書を実は提出させていただきました。資料一を御覧ください。
 この質問主意書では、私の問題意識、外国では寄附先の選択肢が広いこと、また、少ない額でも寄附控除の対象になることから寄附をしやすい環境であることを前提にいたしました。質問の趣旨は、主要国の寄附金に関する税制において日本では優遇される団体数がとても少ないこと、また寄附控除額に五千円の壁があること、また三つ目に、寄附金優遇団体においては財務報告などの透明性を担保するべきであることなどです。
 これに対して政府は、優遇団体数の少なさについては、諸外国における公益活動についての沿革やこれに対する社会の意識などがそれぞれの国により様々であり、我が国と諸外国との間で単純に比較することは適当ではないというお返事をいただきました。寄附活動に関して非常に消極的なのだなというのが私の印象でした。とても残念でした。
 これまで三度の税制改正を経て現在の寄附金控除制度が確立してきていることは私も知っておりますけれども、財務大臣、この答弁について私は先ほども言いましたとおり本当に寄附について消極的だなという印象でしたけれども、その後、政府の認識には変更はありましたでしょうか、大臣。大臣、お願いします。

○国務大臣(与謝野馨君) 先生の御質問ですけれども、寄附金を妨げているのが税であるのかあるいは日本人が持っている文化なのかという根本の問いはあるわけでして、税の方はなるべく寄附金文化というものを盛んになるようにいたしますけれども、やっぱり税を考えていくときに、脱法的に使われないようにするということも考えなければなりませんし、不公平なことが発生しないようにも考えなければならないと思っております。
 ただ、アメリカの大統領選挙とかアメリカのいろんなところのいわゆるアートギャラリーとか、そういうのを見ますと、やっぱりどこかアメリカと日本は違うんだということで、個人の意思がもう少しいろいろな国の文化に反映できるように、あるいはいろんな慈善活動等に反映できるように何とかならないのかと。あるいは、大学なんかもそういう寄附によって支えられているというのを見るにつけ、税制か文化か、どっちかが欠けているんじゃないかなと私は思っております。

○牧山ひろえ君

 私は、隣の方々また周りの人々を思いやる気持ちとか、そういう気持ちというのは日本人ならではの、本当にだれにも、どの国にも負けない気持ちを日本人は持っていると思います。
 私は、文化というのは、ある意味制度でつくるものだと思っております。
 例えば、アメリカを例に挙げますと、公立でも私立の学校でも福祉活動を取り入れています。例えば、年に何度かベークセール、焼き菓子を持ち寄ってそれを販売した収益金を困っている方々に寄附するという習わしが古くからアメリカの各地で行われております。また、先日、予算委員会でもお話ししましたが、大学の入学要件の中で福祉活動や経験が重視されますので、大学を卒業した後、社会人になってからも何らかの福祉活動に参加することや寄附活動をすることが一般的です。
 じゃ、日本ではやっていないかといったら、そうではないです。福祉活動を取り入れている学校やサークルなどありますけれども、アメリカに比べればやはり大臣がおっしゃるとおり低調であると言えます。例えば、福祉活動を大学の入学要件にしていないなどの事実が人間形成における福祉の心をはぐくんでいないとも私は考えます。
 今回の質問に関連して言うならば、寄附の税控除や寄附先の選択肢の狭さなど、社会の制度をもう一度見直していただけないかなというのが私の思いであります。
 まず、日本の寄附金制度を諸外国の事例と比較しながら確認していきたいと思います。資料二を御覧ください。
 左の図がアメリカの国税庁に相当するIRS、内国歳入庁が二〇〇五年に公表したデータです。それによりますと、個人による寄附総額は十九・三兆円、法人による寄附総額は一・七兆円です。税制の違いがありますから一概には比較できないと思うんですが、右側の日本の寄附総額を御覧ください。これ、一目瞭然ですよね。寄附総額には雲泥の差がございます。これを単純に寄附文化の違いだとして片付けてはなりませんが、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(与謝野馨君) これだけ差がありますと、税制だけではなくて、やっぱり文化的背景もまたあるんじゃないかなということがあります。
 先生がこういう部分は直せと、こういうことを御提案いただければ我々も努力をしてみますけれども、これは、税制というのはやっぱり他の税制との整合性とかそういうことも大事なので、この一部分だけ取り上げていいものをつくるとよその部分との整合性が取れないとかいろんな問題があるんですが、こういうところだけは直せと、こういう御提案であれば我々も広い心でちゃんと勉強してみますので。

○牧山ひろえ君

 ありがとうございます。
 では、寄附金に関する税制に関しての国際的な比較について、資料三を御覧ください。
 この資料の下の表では、各国の優遇団体数が掲載されています。アメリカでは、約百十三万団体が寄附金控除を受けられる団体であることが分かります。その一方で、日本は優遇される団体が非常に少ない上に、特定非営利活動を行う法人、NPO法人の認定が極めて少ないのが確認できます。
 内閣府によりますと、日本には三万六千五百五十二のNPO団体があります。ですが、そのうち寄附金控除の対象となる認証団体はわずか九十二件にとどまっていて、寄附する側から見ると豊富な選択肢があるとは到底思えません。認証団体が少ない背景には、もちろん国税庁による厳格な認定基準が存在することは承知しているんですが、厳格な基準を保ちながらも優遇団体を増やしていくことと寄附先の選択肢を広げることが非常に大事だと思います。
 アメリカの政府資料では、アメリカの寄附金控除の対象となるNPOは、二〇〇五年のデータによりますと九十五万団体とのことですから、当時、同じ二〇〇五年のデータを見ますと、日本の場合は三十八ですから、九十五万団体と比べて三十八というのはやはり余りにも少な過ぎると思います。無論、NPOを寄附金控除の対象団体とする場合の認定基準を緩和してきていることは承知していますが、基準を緩め過ぎるのも良くないとの意見も聞かれますから、この点に関しての議論を進めていかなければならないのだと思います。
 大臣、日米の優遇団体数がなぜこれほどまでに違うのだと思いますか。

○国務大臣(与謝野馨君) 私、実はNPO法人の法律を千葉県知事の堂本さんと最後二人っきりで作っていて、そのとき思ったのは、NPO法人、いろんな種類の活動のNPO法人、堂本さん、これも入れるあれも入れるというんで、全部入れていただいて結構ですということになったんですが、そのときに私が考えたことは、NPO法人をつくって怪しげな暴力団とかそういうものが利用するということだけは避けたいということと、それから、NPO法人を舞台に税金逃れをするような、そういうことだけは回避したいということで、NPO法人を寄附金等が元々控除できるような、そういう仕組みにはつくらなかったわけです。それで、その後、税務当局として、実際にこれは寄附金を税法上優遇するかどうかというのは税の当局で判断してほしいということにしたわけで、その判断基準というのはちょっと今、税務当局から御説明をさせていただきたいと思います。

○政府参考人(加藤治彦君) 今お話のございましたNPOのうち税の優遇が受けられるものをどのように拡大するか、これは先生御指摘のように以前から課題になっておりますので、私どもも、結局もう一つの制度としての特定公益増進法人制度がございます。要は、先ほど大臣から申し上げましたように、公益をきちっとやっていただく、そしてそれからそこが明瞭に公開される、我々としては、客観的な基準で、公開された形でチェックシステムを働かせるということで基準を設けております。御覧いただくと分かりますように、すべて客観的な計数基準を中心にしております。それも順次緩和しておりますが、それにつきましては、更に勉強をしろというお声、私どももよく伺いますので、事務的にも関係者と協議をしておるところでございます。
 ただ、もう一つ、今回新しいお話として、事実関係でございますが、昨年十二月から新公益法人制度、これができまして、これは、従来は特定公益増進法人制度は税制の当局の立場でチェックをする、それが税制優遇の条件だったわけでございますが、今回はそれをすべて一元的に公益の委員会の方でやっていただくということになりました。これも一つ大きな転換だと思いますので、その辺の運用状況の拡大等が進めば、それとのバランスにおいてNPO法人もまた一ついろんな新しい展開が生じるのではないかと私どもは期待しておるところでございます。

○牧山ひろえ君

 私は、なかなか認定団体が増えないというのは、苦労してせっかく優遇団体になったのに期待しているほど寄附金が集まらないという、そういうことも考えられるのではないかと思います。
 私は、国税庁として、こういった方々がどういう活動をしているか、どういう団体があるのかというのを十分に公開していないような気がします。例えば、私、ホームページ最近見ましたけれども、リストはあるんです。でも、リスト、名前だけです。どういう名前のNPOかという団体の名前だけで、リンクを張ったりすることもないし、そもそもどうやったらその方々がどういう活動をしているのかというのを国民の方々が知るのかなと思いました。
 もう一つ、優遇団体に比べ、所得控除となる範囲も議論としたいと思います。  資料三をもう一度見ていただきますと、税制上の取扱いとして個人と法人、それぞれの扱いが掲載されています。今日は個人の所得税に焦点を当てていますので個人の項目についての比較をしたいのですが、やはりここでも特徴的な違いがございます。例えば、アメリカでは寄附先の団体によって所得の三割か五割の所得控除が受けられます。特徴的なのは、最低限度額が全然ないんですね。ですから、極端に言えば一セントでも控除の対象となるわけです。この点に関しては説明だけに終わらせて次に進みたいと思いますが、先ほども私がお話ししたとおり、やはり寄附文化はまだまだ浸透していないなというのが私の印象です。
 更に伺います。ここ数年間でe―Taxとしてコンピューターによる電子申告が社会に浸透しつつあります。平成十九年度に確定申告をした方のうちe―Taxを利用した方の割合を御報告いただきたいんですが、参考人の方、お願いします。そしてまた、増加傾向にe―Taxはあるかどうか、政府として今後も推進していくおつもりなのかどうか、併せて参考人の方、御答弁ください。

○政府参考人(岡本佳郎君) お答えいたします。
 昨年、十九年分の確定申告に係る所得税の申告に係りますe―Tax利用件数は約三百六十三万件というふうになっております。それで、これは過去数年間を見ましても大幅に増加をいたしておりまして、この間、私どももオンライン利用計画にのっとり目標を掲げるとともに、各種の簡素化措置、メリット措置などを講ずることによって、今後も発展させていきたいというふうに考えております。

○牧山ひろえ君

 では、増加傾向になるというわけですね。ある方によりますとe―Taxは単なる入力システムとのことでしたけれども、入力されたデータは国税をつかさどるホストコンピューターに集積されるのでしょうから、結果としては電子処理がなされていることにつながると思うんです。要するに、今後もe―Taxを始め電子申告は増えると想定できるわけですから、税務に携わる事務作業は軽減されていくということですね、大臣。

○委員長(円より子君) 大臣ですか。

○牧山ひろえ君

 大臣にお願いします。

○委員長(円より子君) 取りあえず、国税庁岡本次長。

○政府参考人(岡本佳郎君) 委員御指摘のとおり、このe―Taxは導入に当たりまして、納税者の利便ということと税務行政の効率化ということも併せて目標といたしておるところでございます。

○牧山ひろえ君

 ここまでの検討を基に、日本の寄附税制を、では今後どのようにしていくべきなのかということを議論していきたいと思います。
 まず、寄附金控除の計算方法です。寄附金控除は優遇団体への寄附総額から五千円を差し引いて、個人の場合ですと総所得の四割を限度に認められることになっています。私はどうしてもこの五千円の足切りというのが根拠がよく分からないんですね。平成十八年度税制改正で適用限度額を一万円から五千円に下げたということも私は承知しております。では、なぜ今五千円なのでしょうか。財務大臣、お願いします。

○政府参考人(加藤治彦君) 恐縮でございますが、経緯もございますのでちょっと私から説明させていただきます。
 元々、寄附金控除は民間による公益活動に対する寄附を促進するというために、誘因的な措置でございます。それで、当初から、より多くの寄附をしていただきたいということでこの制度を創設されました。元々ドネーションということで志、厚意を重視する。一般的には可処分所得の中で行っていただくわけですが、それをプラス税金分も上乗せすることによってより多くの金額が寄附されるのではないかということで一つ仕組んでおるわけでございます。
 したがって、当初一万円という足切り額があったわけですが、これは少額の寄附の場合はいろいろと恩典が非常に少ない、税をまけることによる効果が小さいということもございますし、さらに、これは寄附を受け取る団体の方でも、もし少額まですべて対象にするとなればそれに対して領収書を発行するとかいろんな事務が生じるという懸念もございまして、当初は一万円ということで足切り限度額を設けたところでございます。
 先生御指摘の十八年に一万円から五千円に引下げが行われました。これにつきましては、当時の議論では、やはり少額といえども寄附を広く集めるということも意義があると。特に一万円の壁というのは、一万円を寄附するという人が非常に当時の議論でございますが多いということで、ところが一万円では全く控除の恩典がないと、それではせっかく控除があるのが生かされないのじゃないかということで、一万円でも控除が受けられるということは五千円ぐらいにすれば一万円の方は五千円分について控除対象になるということで、引下げが行われました。
 これにつきましては、先ほど申し上げましたように、少額の寄附金についてどうするかということと、それから広くあまねく寄附を募るという両方の調和ということでいったんこの五千円という水準が定められた経緯がございます。

財政金融委員会 参議院議員 牧山ひろえ

○牧山ひろえ君

 今の御答弁を聞いてとても残念に思いました。少額の寄附だと戻りが少なくなるとおっしゃいましたけれども、例えば五千円で五%の戻りですと二百五十円ですよ。二百五十円でパン一斤、おいしいパン一斤買えるんですよ。私は、あと金額の、戻りの金額のものだけじゃないと思います。その寄附をする方の気持ちを考えてください。一番に考えてください。
 例えば百円だとしても、十円だとしてもですよ、それは国からのある種メッセージです。自分が善意の行動をしたということに対するお墨付きですよ。それで自分は評価されたんだ、ちゃんと自分の気持ちとして、これだけしか寄附できなかったけれども、国はちゃんと自分の行為を認めてくれたんだというメッセージです。どうしてそういう観点から物事を考えていただけないのか、非常に残念に思います。いかがでしょうか、大臣。

○国務大臣(与謝野馨君) それはそうなんですけれども、事務が大変過ぎるという面もございますので、その点も御考慮いただければと思います。

○牧山ひろえ君

 事務に関してはこれからお話ししたいと思います。
 私は毎年確定申告をしているから分かりますけれども、資料の四、右側のとおり、確定申告の用紙には肝心な項目である課税される所得金額の欄に下三けたがゼロ、ゼロ、ゼロと三つ並んでいます。要するに千円単位での計算となるわけで、納税者にとっては有利な計算方法です。また、申告納税額では百円単位での税額が算定される仕組みになっているので、千円単位と百円単位の双方の仕組みが導入されています。
 その理由を役人の方々に先日質問しましたところ、事務処理の軽減、特にすべて手作業だった時代からの名残だそうです。これは昔の話です、今e―Taxが普及しておりますから。ならば、なぜe―Taxが普及している今も五千円なのか、更になぞは深まるばかりだと思います。寄附金の考えを広く社会に浸透させるお考えがおありなのでしたら、いわゆる足切り額をまずは千円ぐらいにしてみるのもよいと思います。
 更に言えば、昨年は三百六十三万人がe―Taxによる納税を済ませているわけですから、百円どころか一円単位に至るまで正確に納税額を把握できているはずです。大臣、せめて千円の寄附ならしてみようかという方々のために、やはり現行の五千円を段階的に切り下げ、まずは千円ぐらいにしてみようと思いませんか。
 私が思うには、五千円ってすごく高いです。皆さんの平均的なお給料で考えてみてください。私は子育てをしておりますけれども、五千円といったら一か月の習い事の月謝料ぐらいになります。それをやめてまで寄附という方はなかなかいないと思います。でも、千円の、ちょっと高いランチですけれども、千円のランチをちょっと我慢して寄附してみようかという方はたくさんいらっしゃるんじゃないでしょうか、大臣。

○国務大臣(与謝野馨君) そういう御厚志を持った方を大切にするということは社会としては大事なことだと、私は全くそのとおりだと思います。
 一方で、納税者の事務とかあるいは税務署の事務とかということを考えますと、余り少額のところまでやるということというのは、やっぱり少し考えてからではないかと私は思っております。

○牧山ひろえ君

 時間もないのでちょっと次に行きたいと思います。
 アメリカで私が実際に経験した事例を紹介したいと思います。資料五を御覧ください。
 これはニューヨークのオペラ座での寄附の話です。こんなところでも寄附控除が受けられるんです。オペラ座の運営、維持を支えることをしながら、ここにチャリティーをすれば控除が受けられる。大げさに言えば、興味のある、あるいは趣味の活動に寄附をして、さらには税金の控除を受けることができるわけですから、自分が支えたい団体に自由に寄附できる喜びを感じることができるんです。  こうした良い文化を日本にも広めるべきだと思いますが、大臣、何かコメントございますでしょうか。

○国務大臣(与謝野馨君) これはメトロポリタンオペラの定期刊行物に対する税の優遇措置で、多分そういうことをすることによってメトロポリタンオペラをサポートしている仕組みだと思うんですけれども、実は、加藤主税局長に詳しく説明させますが、日本でもこの種のサポートの税制はございますので、それを説明させていただければと思います。

○政府参考人(加藤治彦君) 今御指摘の点につきましては、実は公益特定法人のいろんな類型の中でこういう例えばオーケストラとか劇場とか博物館とか、それぞれ類型がございますが、それを特定公益法人にしております。したがいまして、そういうところに寄附をしていただければ日本の税額控除は受けられるというふうになっております。これも、あくまでもメトロポリタンの側からこれが寄附ですよということを明示されているわけでございますので、それはそれぞれの公益法人の方がそういう活動をして寄附を募っておられると私は聞いております。

○牧山ひろえ君

 本当でしたらハンガリーでのパーセント法もここで、こういうのを導入して納税者が所得税の一、二%相当の使い道を国民が選ぶ、納税者が選ぶという方法も皆さんに御紹介して、大臣にお伺いしたかったんですが、時間となりましたので、こちらで終わらせていただきたいと思います。